続けきるために
Vol. 126 8/6/04

うーん、悔しい。またもや尿酸値が7.0を下回らなかった。正式な全快宣言をこのNewsletterで出せなくなってしまった。

昨日の東京女子医大での定期検診において他の検査結果はすべて正常値であったのに、尿酸値だけが7.2に留まってしまったのだ。これで6月以来3ヶ月7.0切りを目前にして足踏み状態である。嗚呼。

しかし嘆いても始まらない。理由は明確なのだ。

尿酸というものは、その名が示す通り――汗や糞からも出ないことはないが――原則的には尿からしか体外へ排泄されないものだと考えてよい。そうなると、発汗量が高くなった6月以降、尿の量が減っているのは明らかだから、その分尿酸の排泄のペースが遅くなっているのも致し方ないのだ。ちなみに痛風の痛みが一番襲ってくるのは、月平均で言うと、一般に7月が一番多いのも、7月にビールの消費量が高くなるからではなくて、尿酸の体外排泄が上記の理由からスムーズに行かないからなのである。

したがって、今年のような真夏日が終わることなく連続する年の場合、尿酸値が下がりにくいのは仕方ないこととして諦めなければならないことなのかもしれない。実際、昨日も痛風患者らしき初診の患者さんが押し寄せて来ていた。そのため、お盆だというのに、ゴウ先生はかなり待たされてしまったのである。その中で7.2という好結果を挙げたことは、むしろ喜ばなければならないのかもしれない。悪くなってはいなかったのだから。

とはいえ、尿酸値の数字の変動に、受験生よろしく一喜一憂するのはみっともよいものではない。その中で、これまでもミニ・エッセイで書いたように、楽しみを見つけなければ生きている甲斐がない。

このようにして4週間ごとに訪れる定期検診をゴウ先生は一つの節目と考えてこの闘病生活にメリハリをつけようとしているのだ。

減量というものはダラダラとやっていても効率的ではない。5ヶ月で110kgから93kgまで17kg落としてきたわけではあるが、毎日毎日同じ熱量の食事をし、同じワークアウトをして今日に至ったわけではないのだ。

ゴウ先生が考えた戦略とは――以前にも書いたことがあるが――4週間に1回の定期検診の検査結果を一つの途中目標としながら、10月までに体脂肪率を10%切ると同時にすべての生活習慣病からの完治宣言を出すという最終目標を達成することであった。

この戦略を意味あるものにするために、取った戦術が「センセイに誉められろ大作戦」である。

ゴウ先生の東京女子医大における主治医は、50がらみのオバチャン・センセイだ。どこか垢抜けない昔の小学校の先生のようで、白衣も着ていないし大学病院の医師という感じがしない。第一、痛風などの生活習慣病の治療をしているくせに、自分が痛風ではないかしらんと疑うくらいにでっぷりと太っているトホホぶりなのである。

しかし半年も付き合ってくると、むしろそのトホホぶりが安心感をゴウ先生にもたらしてくれるようになってきたのである。このように長い闘病生活を余儀なくされる病気においては、大上段に振りかぶって偉そうにあれこれ命令したがる医者だと参ってしまう。それよりは、特別なことは何も言わずに、「いいじゃない」と誉めてくれるこのセンセイがありがたいのである。

昨日も「いいじゃない。このままがんばっていきましょうね」と言ってもらえて、ほっとした。そんなわけで、このセンセイから誉められるようにしておけば、完治できるとゴウ先生は判断した。「センセイに誉められろ大作戦」はいまのところ有効なのである。

ただし、この戦術を活かすためには、涙ぐましい努力をしなければならなくなる。たとえば今回がまさにそうだった。7月の定期検診の後、96kgから94kgを行ったりきたりして、8月に入っても体重が順調に落ちてこない。これではいかんと、82日からジョギングの量を増やして、カロリー制限を厳しくした。その結果、体脂肪率が15%前後で時に92kgを体重計が指すようになり、大体93kgくらいに落ち着くようになってきたのだ。それもこれも「誉められる」ためである。

人間、怒られるより誉められた方がやる気が出るに決まっているのだ。でも誉められたこともしていないのに、誉められるのは侮辱された気がする。ゆえに、必至コクのである。

さらに、次の9月の定期検診の目標は、体重90kgと尿酸値7.0の両方を切ると同時に、体脂肪率10%にリーチをかけることだ。そしてもちろんシックス・パックにも。

しかしこの目標がゴウ先生の限界に近づいて来ていることは、諸君にも分かってもらえることだろう。何せ脂肪を削ぎ落としたバリバリの体を作らなければ、不可能な数字だからだ。

しかしそれに挑戦するのがまた楽しみでもある。

そこでそのファイナル・チャレンジに向けてゴウ先生は、次なる戦術を積極的に採用することにした。「弛んで締めよう大作戦」である。別名「チーティング大作戦」とも言う。

要は、厳しいダイエットやワークアウトばかりでは精神的・肉体的にバーンアウト症候群を引き起こして目標達成の前にすべてを投げ出してしまうか、最終目標達成が大幅に遅れてしまう恐れがある。それを避けるために、定期的に好きなものを好きなだけ食べたり飲んだりして、モチベーションを高いまま維持しようという、なかなか素敵なタクティクスなのである。

というわけで、昨日の検診が終わると、一緒に来てくれていた妻と一緒に東京女子医大に入っているラ・ポルトというレストランで生ビール(小)と生姜焼き定食とざるそばを食べてやった。ウッシッシッシ。

まるで『幸せの黄色いハンカチ』の健さんのようである。

いやいや、ビールのうまいことうまいこと。アサヒ・ドライであったが、あれほどうまいビールであったとは・・・、ゴウ先生、シラナンダ。甘露甘露である。それを飲みながら、カロリーを気にせずにガバガバ食べる気分は何にも換え難い。

こうしたご褒美を自分にあげると、また明日からがんばろうという気にもなる。弛めるから締まることもできるのだ。

実際、この作戦は生理学的にも理に適っている。カロリー制限を続けていると、人間の体はそうした低カロリー生活に順応してしまい、基礎代謝率が大幅に下がって自分の体を守ろうとする。そうなると、体についている脂肪が代謝されなくなってしまうのだ。したがって、時々高カロリーな食事をすることで、基礎代謝率を上昇させ、脂肪を燃焼させやすくすることが必要なのである。というわけで、こうしたチーティングは減量するボディビルダーの間では当たり前のように行われている。

そこでゴウ先生も、うまくダイエットが進行してきたならば、時にはビールくらいは解禁しながらモチベーションを維持させようという作戦を立てた。

人間というのは「集中と開放」の繰り返しで成長する。「訓練と休養」と言ってもよい。同じ事をずっと続けていても、結果は出ない。ゆえに、進化の過程にささやかな変化を持ち込みながら、進化の道筋をしっかりと歩んでいかなければならないのだ。

成功とは続けきれることである。続けきれば、必ず成功するのだ。だからこそ、続けきることを最優先で考える必要がある。そのためには、毒すらも栄養に変える貪欲さが必要なのは言うまでもない。

続けきれる諸君もいれば、続けきれない諸君もいる。この両者に能力的には違いはない。違うのは、続けようという「気」と続けるための「戦略・戦術」なのである。

ゴウ先生は、成功したい。したがって、一度決めたことは、いかなる手段を使っても続ける。そうして成功の種を成功の果実としてもぎ取りたいのである。時にはズル(cheating)をしても、長い目で見れば、それも有効な場合があるのだ。

続けよ、諸君。何事も続ければ、成功する。迷えば、ゴウ先生に相談せよ。そして成功せよ。よろしいか!

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